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低い声と、ざわりと肌を震わせる冷淡な空気に私ははっと彼を見上げる。
赤い双眸が、うっすら光を帯びているような。
(マオ、本気で怒って――!?)
「ちがいます! 玄影さんじゃありません!」
私は咄嗟にマオの両手を掴んで、腕の中でむりやり振り返った。
マオの両頬を掌で覆って固定して、射るような瞳の興味を自身に向かせる。
「さきほどの音は玄関からです! それに、何か入れられたみたいなのですぐ確認しないと――っ」
「ま、まゆ、茉優……っ!」
「はい!」
先ほどまでの冷えた雰囲気はどこへやら。
マオはうっすら赤みを帯びた顔で「ああと」と視線を彷徨わせ、
「積極的なのは嬉しいんだが、その……茉優にはそのつもりがないだろう? だから、その……この体制は、刺激が強すぎるんだが」
「体制……? は!」
(たしかにこれじゃ、キスをしようとしているみたいに……!)
「す、すみません! つい!!」
(早く止めなきゃと思って……っ!)
なにもこんな近い距離で向き合う必要もなかったはずで。
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