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スタスタと玄関のドアまで歩を進めた玄影さんは、私達に一度微笑むと躊躇なく郵便受けをガコンと開けた。
玄影さんが手を差し入れる。
引き抜かれたその手には、ピンポン玉ほどの黒い塊が握られている。
「花……なのか?」
私を背に庇うようにして立っていたマオが、訝し気に目を細める。
玄影さんは「造花ですね」と戻ってきて、私達に見えるよう掌を開いてくれた。
紫を帯びた黒い花弁が六枚。
丸く膨らんだ根本から先にかけて星型に広がるその中央には、黄色い花芯が。
「黒いチューリップ……でしょうか」
「おそらくは、クロユリではないかと」
「クロユリ? また大層な恋文だな。ストーカーがいるのか?」
「まあ、当たらずとも遠からずというところでしょうか」
「え? あの、すみません。恋文とかストーカーとか、どうして分かるんですか?」
小さく挙手した私に、マオが「花言葉がな」と肩をすくめる。
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