新たな依頼人とプロのペット

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「クロユリに代表的な花言葉のひとつに、"呪い"ってのがある。これは富山の伝説が元になっていて、戦国武将の佐々成政(さっさなりまさ)が側室の早百合(さゆり)が不貞を働いたという告げ口に騙され、懐妊中だった早百合を殺してしまったんだ。彼女は死の間際に"立山にクロユリが咲いたら佐々家は滅亡する"と言い残してな。なんやかんやあって、結果的に佐々家は滅亡してしまいましたって話だ」 「なんやかんやで滅亡、ですか」 「ああ、それもクロユリが関わったなんやかんやだ。詳しく知りたかったら夜にでも話そうか。長くなっちまうからな。それと……」 「一方、"愛"という花言葉もあるのですよ」  ずいと私の眼前に、にこにこと笑む玄影さんの顔。  マオが「あ、てめっ」と慌てふためくもなんのその、玄影さんは「どうぞ」と私の掌にクロユリを乗せる。 「こちらは北海道……アイヌ民族の言い伝えといわれています。好いた相手の近くに密かにクロユリの花を置いて、誰が置いたのかもわからないその花を想い人が手に取ったなら、二人は結ばれるだろう。可愛らしいおまじないですね」 「おまじない……」
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