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女郎蜘蛛と赤い爪のおまじない
「里香さん、こちらのネイルは処分しましょうか?」
本日はお休みだと家に滞在中の里香さんに、私は造花入りの缶の横にあった分離したネイルを手に取る。
「昨日整理をさせていただいて気が付いたのですが、里香さん、これとまったく同じ別のネイルを使われていますよね。なら、こちらは不要かと思うのですが」
ベッドで横になったままの里香さんは、躊躇うように視線を外す。
「……それは、そこに置いておいて」
(やっぱり)
「なら、使えるようにしますか?」
「え……できるの?」
がばりと起き上がった里香さんを、ベッド下に座っていた玄影さんが落ちないように支える。
けれど彼には目もくれない里香さんに私は「はい」と頷いて、
「目薬を使います」
私はポケットから、用意していた目薬を取り出した。
里香さんが傍までくる。彼女に見えるようにしながら、分離してしまっているネイルの瓶を開けた。
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