女郎蜘蛛と赤い爪のおまじない

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「分離したり、ドロドロになてしまったネイルに目薬をニ、三滴たらします。多いと固まらなくなってしまうので、少しずつ慎重に。蓋をして本体を倒し、空気が入らないようにゆっくりと転がして混ぜます。しばらくコロコロ続けると……」 「……混ざった」 「良さそうですね」  見てみてください、とボトルを手渡すと、里香さんは蓋を開いて迷いなく左手の薬指に塗った。 「ホントに戻ってる……」 「やっぱり、本当は左手の薬指に塗っていたんですね」 「え……?」  戸惑いの目を向ける里香さんは、しまったという顔をした。 「違う、これはっ」 「里香さん。昨日の帰り、あいりさんにお会いしました。……あいりさんの左手の薬指、里香さんの左足の薬指のネイルの色と同じでした」 「え……?」 「おまじない、ですよね。おそらくは、お二人が一緒にいた時からの。里香さんが手ではなく足の爪を塗っていたのは、飲食店でネイルは禁止されているからではないでしょうか」  視線を落とした里香さんが、手にしたボトルをぐっと握りしめる。
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