女郎蜘蛛と赤い爪のおまじない

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「……里香さん。私は里香さんを尊敬します。だって、自分の気持ちも相手のためにって押し込めて、あいりさんと離れたんですから」 「どこが。表面上は突き放していたって、ちゃんと逃がしきれてない。慰めとか、いらないんだけど」 「慰めなんかじゃありません。本心です。だって……私は、逃がしてあげなきゃってわかっているのに、離れるどころか話してあげることすら、出来てないんです」 「……アンタが?」 「はい。お相手の優しさに甘えて、その人の幸せより、自分の欲を優先させているんです。……私からしたら、里香さんよりもよっぽと私のほうが"蜘蛛"ですよ」 「……アンタは、人間だろ」 「人間、なんですけどね。でも人間だって、独占欲はあります。相手が自分を見てくれるのならと策を張る、狡猾さだって」 「……どれもアンタには似合わない言葉」 「でも、本当ですから」  苦笑する私を、里香さんがじっと見る。  探るような眼。同時に、その頭の中では、たくさんの感情を繋ぎ合わせているような。
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