プロローグ 夢の終わり

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 私の名前は白菊茉優(しらぎくまゆ)だ。"ねね"ではないし、"ねね"という知り合いもいない。  なのになぜか無性に懐かしく、そして愛おしく感じる。 (相変わらず、変な感覚)  知らない名が、まるで自分のもののように思えてしまうのは、あまりにも同じ夢を繰り返しすぎているからだろうか。  微かな引っ掛かりを抱えつつも、慣れ親しんだ日常が始まるのはいつものことで。  そしてまた、なんの前触れもなく、ある日突然にあの夢を見る。  白い靄、細身の花弁を星のごとく開いた、真っ白な花。  寸分たがわず繰り返される、同じ夢。けれどその日は、いつもと違っていた。  浮遊感も、横たわっている感覚もない。初めて立つ足下には、清らかな水の感覚。 「――ねね」  声がした。あの声だ。  けれどいつものように遠くはなく、はっきりとした、近い位置からのもの。 「ねね」  繰り返される、誰かの……まるで"私のもののような"呼びかけ。  そこにいつもの悲壮感はなく、心なしか弾んだ、歓喜を染み渡らせるような声色だ。  霧が晴れる。徐々に露わになったのは、周囲の花に似た真っ白な髪をした、赤い目の男性。
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