前世の記憶がないので嫁にはなりません

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「北鎌倉にな、俺の世話になっている家がある。血の繋がりはないが、俺の"家族"ってやつでな。親父に探していた嫁をやっと見つけたと言って飛び出してきちまったもんで、たぶん、待望の嫁に会えると期待して待っていると思うんだ。挨拶がてら今後の話も出来たらと思って向かっていたんだが……茉優からしたら、眉唾な話だったな。悪かった。家に帰りたいよな? ソイツに住所を打ち込んでもらえるか。送っていく」  ほい、と渡されたのは小型のナビ。  私は反射的に受け取りつつ、 「でも……その、親父さんという方はお待ちになっているのですよね……?」 「いいさ、事情が事情だったんだ。俺がちゃんと説明しておく。……無理強いはしたくないんだ。今はただ、こうして会えて話せて、同じ時間に存在しているんだって知れただけで、長年の想いが報われた気分だからな」  それに、と。マオはどこか苦し気な笑みを私に向け、 「茉優に嫌われて、もう会えなくなるのは、なによりも辛い」 「……っ」  その表情に、言葉の重さに。  ああ、本当に彼は、私を大事に思ってくれいているのだと。 「……行きましょう、マオさん」
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