女郎蜘蛛と赤い爪のおまじない

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 里香さんは立ち上がり、玄影さんに「花、ちょうだい」と手を差し出す。  白い布製の花弁にそっと頬を寄せ、 「お願い。縛り付けることを、許して」  それから決意を固めたようにして、ベッドに置かれていたスマホを手に取った。  電話をかける。相手は、言わずもがな。 「……あいり? その、久しぶり。……話が、したくて」  途端、え、と里香さんが虚を突かれたような顔をした。  真っ青な顔で、スマホから耳を放す。 「里香さん?」 「……電話、切れた」 「! そんなはず――」  刹那、ピンポン、ピンポン、ピンポンと。  三度響いた呼び鈴の音に、里香さんがハッとしたようにして駆けだす。  外も確認せずに勢いよく開けた扉の先。立っていたのは――。 「っ、あいり」  里香さんが彼女の名を呼んだ、次の瞬間。 「りかっ!」  あいりさんが里香さんの首元に腕をまわして、抱き着いた。  よろけた里香さんが、上り口に腰を落とす。 「あ、あいり――っ」 「里香のばか!!」  あいりさんが顔を上げる。  大きな瞳から、涙がぽろぽろと零れ落ちた。
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