前世の記憶がないので嫁にはなりません

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「ああ……って、住所、まだ入ってないぞ?」 「私の家ではなく、北鎌倉の……マオさんの、お家です」 「! 茉優、それって……また俺の嫁になってくれるってことか!?」 「ちがっ! そこまでは……って、顔! 前見ないと!!」 「大丈夫だ! 見えている!」 「私からは見えているようにみえませんっ!」  そうか? と少しばかり不満そうにして、マオがやっとのことで前を向く。  私はほっと息を吐きだしてから、「ええとですね」と打ち明けた。 「前世の話はやっぱり、ちょっとまだ、消化不足といいますか……。信じられない気持ちと、納得してしまっている部分が混ざっている状態でして……正直、混乱しています。ですのでマオさんのお、お嫁さんになるとかは、お約束できません。すみません」  ぺこりと頭を一度下げ、私は言葉を続ける。 「とはいえ確かに私は、夢でマオさんと出会ってます。それこそ子供の頃から何度も、何度も。だからきっと、無関係ではないのだと思うんです。その夢があったから、マオさんは私を探してくださった。だから、助かったのです。そのお礼……といいますか、マオさんのお父様にも、ちゃんと私を見て頂いて、事情を把握して頂いたほうがいいのではないかと……思いまして……」
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