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見るからに新鮮な野菜やお肉が、それぞれ絶妙な量で配置されている。
(そういえば、ここの中身って誰が入れてくれているんだろ)
タキさんなのか、それとも、別の誰かなのか。
今度タキさんに聞いてみようと決めながら、柔らかそうな春キャベツに目をとめた。
そろそろ旬も終わるだろう。ロールキャベツにしてみようか。
マオならきっと、少し教えれば上手に包んでくれるだろう。
「マオさん、器用だからなあ」
離れでの同居生活は、思っていた以上に穏やかなものだった。
マオは意外にも簡単な料理はこなせていて、新しいことも少し教えれば即座に吸収してしまう。
二人で調理場に立つことが多いが、朝は時折、私よりも先に起きて余分に作ってくれていたりもする。
家族ではないのに、心地いい。
そう思えるのはひとえに、マオの気遣いが絶妙なんだと思う。
(甘やかされているなあ……)
これも彼のアピールの一環なのだろうか。
だとしたら、着実に攻略されてしまっているわけで。
「……トマト缶をつかって、スープはトマトベースにしようかな。マオさんにも相談してみなきゃ」
呟いて、視線を落とす。
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