150人が本棚に入れています
本棚に追加
/239ページ
「鎌倉紅谷のクルミッ子ってやつでな、ここ最近のイチオシなんだ。現世住みのあやかしにも人気が高くてな、なかなか幽世には数を出せないのもあって、向こうじゃ結構な高値で取引されるんだ」
「え、そんな貴重なお菓子をいただいてしまっていいんですか?」
「仕事は仕事、プライベートはプライベートだからな。これは茉優と俺のぶん」
ほい、と小皿に乗せられたのは、バターサンドのような、けれどもしっかりと厚みのある長方形の菓子。
透明な包装紙でくるまれていて、クリーム色のインクでパッケージと同じ二匹のリスが描かれている。右上には「紅谷」の文字。
「クルミっ子……あ、この中のがクルミなんですね」
ぺりぺりと包装を剥がしながら、サブレに似た薄い生地にサンドされた茶色いクリームの断面に気が付く。
所せましと詰まった、たっぷりのクルミ。と、マオも包装を剥がしながら、
「運がいいとそこのクルミがハートになっているらしいんだが、茉優のはどうだ? 俺のは……ないな」
「私のは……あ、もしかしてコレですか?」
くるりと回した反対側に、確かにハートに見えるクルミが。
「あったのか?」
最初のコメントを投稿しよう!