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「いや、違うんだ、茉優。謝るのは俺だ。それに……そうか、俺は俺に嫉妬してたってことか。情けないことこの上ないな」
「へ? マオさんがご自分に嫉妬……ですか?」
わけがわからないと戸惑う私に、マオは「ああ」と両手で自身の顔を覆って、項垂れながら盛大なため息をひとつ。
「てっきり、茉優に想い人がいるのだと思った。そうか、俺だったか」
「!」
(あ、あれ? もしかして私、とんでもないことを言っちゃったんじゃ……!)
今更気が付いて、顔に羞恥が上る。
心なしか、マオの耳も赤く染まっているような。
「なあ、茉優。俺、うぬぼれてもいいんだよな? "逃したくない"って悩んでくれるくらいには、茉優は俺を好いてくれているんだって」
「そっ、れは……! ですが、私がいくらマオさんを好きになっても、そもそもマオさんが愛してらっしゃるのは"ねね"さんですし!」
「あーと、その点については、本当に悪かったと思っている」
マオは居住まいを正して、
「俺は確かに"ねね"を愛している。いや、愛していた、だな。なぜならそれは、前世の俺の話なのだから」
「……前世の、話?」
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