前世の記憶がないので嫁にはなりません

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 だんだん下がっていく視線。  けれど最後まで伝えなければと、私は必死に口を動かす。 「"家族"は、大切にしたほうがいいと思うんです。帰りを待ってくれているのなら、なおさら」  七歳の時、突如として帰らぬ人になってしまった、両親の姿が思い起こされる。 「それじゃあ、行ってくるからな、茉優。ごめんな、寂しい思いをさせて」 「仕事が終わったら、すぐに帰ってくるから。お祖母ちゃんに甘えすぎて、我儘ばかり言っては駄目だからね」  多忙だった両親が夜分、突然仕事に呼び出されるのはたびたびあることで。そうした日は決まって、二駅ほど隣にある祖母の家でお泊りをしていた。  よくあることだった。二人の帰宅を、疑いもしなかった。いつものように。  お祖母ちゃんと夕飯を食べて、お風呂に入って。畳に並べて敷いた布団にくるまりながら、内緒話をして眠りにつく。  障子ごしに届く柔らかい朝陽に目が覚めると、慣れ親しんだ車の音が聞こえてきて。
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