新しい愛をはじめましょう

12/15

150人が本棚に入れています
本棚に追加
/239ページ
「自分の痛みは隠してしまうのに、他人の苦痛には敏感で。うまいものには目を輝かせて感動してくれる。恥ずかしそうにはにかむ顔も、嬉しさからの溢れんばかりの笑顔だって。俺が愛おしく感じるのは、すべて茉優そのものだ。俺が好いているのは、愛を捧げたいと願う相手は、茉優だけなんだ」 「……っ」 「なあ、茉優」  マオがそっと、私に向かって手を差し出す。 「前に、夫婦となるのなら、共に"夫婦"を築いていくことを許してくれる人とがいいって言っていたよな。俺じゃ、駄目か?」 「!」 「ああいや、今すぐに夫婦になろうとか、婚約しようとか、そうした急いたことではなくてな。言うなれば候補というか。俺を、そういう対象として見てくれないか? 少しでも、俺を好いてくれているのなら。ただの同居人とか、仕事仲間じゃなくて、誰よりも茉優に近い位置でいたい」  我儘なのはわかっているんだがな、と。マオは柔らかな口調で続ける。
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加