前世と愛しい巡り合わせ

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「黒く長い髪をした、可愛らしい娘でな。黙っていれば儚げな花のようなのに、まあ好奇心の強いお転婆だった。どこでも気味が悪いと言われる俺の容姿にも、興味津々どころの話じゃない。粋な色だと、この世で一等美しいと心から笑んでくれた彼女に、前世の俺は運命を決めたんだ」  マオという名も、"ねね"からもらったものなんだ。  マオは窓の外を静かに眺める。 「あの時の俺には名前などなかった。師匠を含め、俺を育ててくれた人たちは、"坊"と呼ぶだけだったからな。それを知ったねねが、名前がなけりゃ呼べもしない。こんなでっかい"坊"がいてたまるかといって、な」 「……ねねさんはどうして、"マオ"と?」  マオの手が、ぴくりと動いた。  遠くに投げられていた目が、私を向く。 「俺の髪の白が、ハマユウの花に似ているからと。ハマユウにはハマオモトという別名があるんだ。それで、マオがいいと」 「ハマユウの花……って」 「茉優も知っているはずだ。俺と出会った夢の中で、ヒガンバナに似た白い花が咲いていただろう? あの花がハマユウだ。前世の俺達が暮らした村に咲いていた」
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