150人が本棚に入れています
本棚に追加
/239ページ
「俺の都合のいい耳が勝手に空想を作り出したんじゃなければ、さっき茉優、俺を"初めて好きだなって思えた人"と言っていたような気がするんだが……。本当か?」
「あれ、は……っ!」
(今更ごまかしても無駄か)
「本当……です」
消え入りそうな声で肯定した私に、マオは「なら」となぜか頬を強張らせ、
「茉優はその……好きでもない相手と、大人になったのか?」
「……はい?」
「いや、悪い。話したくないことならいいんだ。そうだよな、色んな事情があるよな。もし俺で力になれることがあったら、遠慮せずなんでも言って――」
「ちょっ、ちょっと待ってくださいマオさん。いったい何をそんなに必死に……」
好きでもない相手と大人になる?
大人……大人……?
「!」
やっとのことで理解した私は「ちがいます!」とぶんぶん首を振り、
「ないです! マオさんが考えてらっしゃるようなことは、これまで一度も!」
「だって、とっくに立派な大人だって」
「それはすでに成人済って意味で言ったんです!」
「…………そうかあ」
してやられたと言いたげに天井を仰ぐマオに、私はつい、小さく噴き出して。
最初のコメントを投稿しよう!