猫又様は花嫁を迎えたい

4/9

150人が本棚に入れています
本棚に追加
/239ページ
 俺達も言葉を尽くし、態度でも示していた。  これは俺達あやかしの問題で、奥方様がここにいてくれるのは、俺達にとっての幸福なのだと。  けれども奥方様は結局最期まで、"迷惑をかけてしまった"と責任を感じていた。  幸せそうな笑顔の裏に隠していたのだ。  寿命も違う、価値観も違う。  それでも奥方様がこの地にとどまり生涯を終えたのは、大旦那様を愛していたからだ。  そもそもが、違うのだ。  奥方様と大旦那様は初めから互いに惹かれ合っていて、それなりの時間をかけて互いを理解し、それでも一緒になりたいと告げたのは奥方様だった。  大旦那様はちゃんと一線を引いたところで待ち、決定は奥方様に委ねていた。  愛しているからこそ、欲を押し込んでいたのだろう。奥方様の幸せのために。  なのに、だ。 「全てを奪って囲い込み、己の容姿を承知したうえで、愛を囁いているのだろう。前世で夫婦だったと、嘘までついて」 「嘘じゃねえ。"マオ"と"ねね"はたしかに夫婦の契りを交わした」 「夜更けに二人で密かに指切りをしただけだろう。おまけにそれっきりで、翌朝には死に別れたというのなら、夫婦と呼べることなど一つもしていないじゃないか」
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

150人が本棚に入れています
本棚に追加