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「俺は"マオ"じゃない。だが"マオ"は俺だ。どうしたって切り離せない、この身に生を受けた時からこの胸に巣食っている。わかるか朱角。俺はあやかしであり、怨念なんだよ。だがこの身も心も、俺のモノだ。あやかしである親父のように"賢く"なんてやれない。だからって、怨念などに譲ってやる気など微塵もない」
茉優が愛おしんだ。
切なげな響きとは裏腹に、瞳が飢えに彩る。
「苦労をかけるとわかっていても、逃したくはない。他の奴など選ばせたくはない。茉優の唯一になりたいんだ。いや、ならなきゃならない。そのためになら、使える手はなんでも使ってやるさ。茉優を得るのはあやかしでもなければ、怨念でもない。この俺だ」
(まったく、拗らせているな)
つまるところ、この男を構築する全て要素があの人間を欲しているのだ。
もはやそこに、明確な境界などないのだろう。
だからこそ、この渇望は己の欲なのだと。
言葉にして、脳に刻んで、己の魂に言い聞かせている。
("欲しい"という事実さえあれば、他からは真実などなにひとつ分からないだろうに)
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