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開いた本を伏せ置いたかのようななだらかな三角屋根には、鈍色の瓦が整然と並んでいる。
おそらくは、というか、確実に"豪邸"と呼んで差し支えない邸宅だろう。
(ス、スーツでよかった……!)
うっかり私服の時に連れ出されていたら、事情説明どころか門前払いだったに違いない。
「あ、あの、マオさん。つかぬことをお伺いするのですが……」
「うん?」
「その、マオさんのお父様、私のことをお金目当てに嘘の前世を語る結婚詐欺師だと待ち構えていたりはしませんか……?」
こんな豪邸を持つ家のご子息ならば、悪い女に騙されやしないかと警戒しているに違いない。
ましてや前世だなんて、他者には真偽のわからない話が基準とあっては、丁度いい口実を得た悪女だと考えるのが当然では。
けれどマオさんは、にかっと笑って、
「なんだ、金を積んだら嫁になってくれるのか? いくらほしい?」
「な!? ちちちち違います!! お金で嫁にはなりません!」
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