猫又と化け狸

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「だろ? ちゃーんとわかってるし、親父も人を見る目は俺以上だ。むしろ、親父のほうが俺よりも嫁として迎えようとしてくるだろうから、押し負けないように気を付けてな」 (そ、それは余計に不安なやつでは!?)  あわあわと戦慄いている間に、マオさんは引き戸に手をかけ「ただいまー」と開いてしまった。 「おかえりなさいませ、坊ちゃま」  深々と頭を下げる、和服姿の女性。声の感じと、上げられた顔から推測するに、七十代前後だろうか。背筋の伸びた凛とした立ち姿が美しく、いまいち年齢が読み取れない。  マオさんとは少し異なりグレーに近い白髪と、きりっと鮮やかな赤い口紅が印象的だ。 (坊ちゃま……って、マオのことだよね)  やっぱり彼は"坊っちゃん"らしい。  口振りからして、マオの母親や祖母というよりは、お手伝いさんのように思える。  年月を感じさせる洗練された雰囲気にうっかり見惚れていると、 「無事にお連れできたようで、なによりでございます」 「!」  ばちりと合った視線に、慌てて頭を下げる。
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