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「と、突然お邪魔して申し訳ありません! 私、白菊茉優といいます。手土産もなく恐縮ですが、マオさんとご一緒に事情をご説明させていただければと、厚かましくも連れ立っていただきました次第でして……っ」
「これはこれは、ご丁寧にありがとう存じます。こちらにて長い事仕えております、タキと申します。茉優様にお会いできる日を、それはもう楽しみにしておりました。さ、お上がりくださいませ。大旦那様も今か今かとまあ、うっとおしい……おほん、心待ちにされているようでして」
(いま、うっとおしいって言った)
その一言でまだ見ぬ大旦那様と、タキさんの力関係がうっすら察せる。
目を合わせたマオに頷かれ、靴を拭ぎ家に上がる。
「お部屋にご案内いたします」
先導してくれるタキさんに着いていこうとすると、
「坊ちゃま。坊ちゃまはまず、お着替えを」
「な……このままで構わないだろ」
「とんでもありません。大旦那様に茉優様をご紹介する大事な晴れの日なのですから、きちんと整えてくださいませんと」
「だが……っ、それじゃあ美優がひとりになっちまうだろ」
「坊ちゃま」
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