猫又と化け狸

8/24
前へ
/239ページ
次へ
「先ほど再会なされたばかりだというのに、さっそく坊ちゃまの手綱を握られていらっしゃるとは。さすがにございます、茉優様」 「いえ! 偉そうに出しゃばってしまってすみませんでした」 「出しゃばるなど。坊ちゃまは嫌だと言ったら頑固なものですから、助かりました」 (……優しいな)  気遣いと、にこりと笑んでくれた目尻に、祖母の顔がちらついて和んでしまう。 (って、あれ?)  聞き間違えじゃなければ、いま。 「"再会"って……タキさんも、私達の"前世"をご存じなのですか?」  先導するタキさんの後を歩きながら訊ねると、タキさんは「ええ」と少しだけ私を振り返り、 「この屋敷の者は皆、坊ちゃまが以前の世で縁を繋いだお方を探されているのだと、存じております。ですが仔細まではき聞き及んでおりませんゆえ、ご安心くださいませ」 「あ、いえ……」 (安心もなにも、前世のことなんてこれっぽっちも覚えてないのだけれど……)  ともかくタキさんをはじめとするこの家の人たちは、皆、私が"マオの嫁"なのだと信じてくれているということ。  おそらくそれは、"大旦那様"も。
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加