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「少量ですし、あとは自然乾燥でも問題ないかと思います」
「……畳の拭き方を知っているんだね」
「あ……祖母と住んでいた家に、畳があったので。小さい頃から、よく濡らしてしまっていたんです」
たしかに、私くらいの年齢だと、そもそも畳に馴染みのない人も多いだろう。
その人は「ふむ」と納得したように小さく呟いてから、
「ハンカチ、汚してしまってすまないね。クリーニング代を用意するから、少し待っていてくれるかな」
「いえ、私が勝手にしたことですし、ただの水濡れだけでしたから。お気になさらないでください」
慌てて告げると、その人が「本当にいいのかい?」とどこかしょんぼりとした顔をする。
(なんだか、お茶目な人)
思わず笑みを零しながら「はい」と頷くと、その人は「ありがとう」と嬉し気に目元を緩めた。
すっと伸ばした指で、花瓶から垂れ下がる白い花に触れる。
「これ、何の花でしょう?」
茶目っ気たっぷりな声に尋ねられ、私は「え、と」とどもりながらも急いで花に視線を向ける。
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