猫又と化け狸

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 その人は変わらずにこにこと優し気な笑みを浮かべていて、けして、正解を求めているわけではないのだと分かる。 (大旦那様が来られるまでひとりだからって、気を遣ってくれたのかな……)  タキさんといい、ここの人たちは優しい。  肩の力が抜けるのを感じながら、私は「そう、ですね……」と口を開いた。  白は白でも、夢で見たあの花とは、まったく違う花。  よくよく見れば目の前の白い花は茎ではなく、細い枝から垂れ下がり弧を描いている。  根本から穂先にかけて、徐々に小さくなっていく蝶々に似た花弁。  弓なりに弧を描くその姿には、見覚えがある。けれど。 「……藤、のように見えますが、その……色が」 「うんうん、そう。正解。これは白藤といってね。花言葉は歓迎、恋に酔う。それから……決して離れない。あの子とあなたに、似合いの花でしょう?」 「っ!」  にこりと優美に笑んで、その人が花瓶の位置を整える。 (あの子、って)  聞くまでもない、マオのことだ。  なら、この人はまさか――。 (私の待っていた"大旦那様"!?)
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