猫又と化け狸

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「それで、式は神前式、教会式、仏前式のどれがお好みかな? ゲストハウスやリゾートスタイルってのも素敵だねえ。今は様々な形があって面白いのなんの。ああ、費用は私がもつから、どーんとやってくださいな。ただちょっと、参列者には口出しさせてもらわないといけないのだけは、勘弁してくれるかな」 「式って、あの、そんな」 「家族になるんだ、遠慮は無用だよ。あの子の悲願が成就するのを、私をはじめとするこの家の者がみんな待ち望んでいたんだ。あ、その前に茉優さんのご両親にもご挨拶しないとだよね。うっかり、うっかり。確認しておきたいのだけれど、茉優さんのご両親には、私どもの素性は隠しておくかい? 少し前ならばともかく、今の時代にあやかしは馴染みがないものねえ」 「…………あやかし?」  言われた通り、馴染みのない単語を確かめるようにして繰り返す。  と、狸絆さんは「ええ」ときょとんとして、 「私どもはあやかし。私は化け狸、『つづみ商店』の店主です。あの子から、聞いてないかい?」 「…………」  あやかし。化け狸。  これまでの人生で人から言われたことのないような言葉に、思考がフリーズする。
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