猫又と化け狸

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(もしかして、からかわれているとか……?)  でも、眼前の狸絆さんからはそんな雰囲気は感じ取れないし……。 「もしかして、はじめて知ったのかな?」  私の反応から悟ったのだろう。  気遣うように小首を傾げて訊ねてくる狸絆さんに、私は少しだけ躊躇してから、 「はい……。あの、大変失礼なことは承知しているのですが、その……本当の、話なんですよね?」  僅かな可能性にかけて、ちらりと上目で伺いながら訊ねる。  狸絆さんは「そうだねえ」と朗らかに頷いて、 「論より証拠、かな」 「へ?」  途端、ぼぶんと白煙が立ち上がったかと思うと、狸絆さんの姿が消えた。  違う、消えてなどいない。  白煙の中から「よいしょ」と声がしたかと思うと、薄れゆく靄の中、机に前脚を乗せた獣――狸があられた。 「ほらね、かわいいでしょう?」  ふんふんと黒くとがった鼻をひくつかせる、狸絆さんと同じ髪色のもっふりとした狸。  絶妙なカーブを描いた小さな耳が、可愛さをアピールするようにぴこぴこと動く。 (か、かわいい……!)  もふりたい。そんな衝動が湧き上がってくるのを、ぐっと耐える。
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