151人が本棚に入れています
本棚に追加
だって見た目こそもふもふな狸だけれども、これは紛れもなく、ロマンスグレーなマオの養父であるあの狸絆さんなのだから。
「あ、あやかしといっても、姿は本当に狸さんなんですね」
「ん? ああ、実を言うと別の姿もあるのだけれどね。まあ、現世には向かないもんで、こちらで。私があやかしだという証明にはなったでしょう?」
「は、はい……! ありがとうございました。私のために、お手間をかけていただいて……」
「怖くはないかい?」
訊ねられて、あ、と今更に思う。
そうだった、愛らしい姿に気を取られていたけれど、そもそもは狸絆さんたちがあやかしだって話だった。
自身の心を探るようにして、狸になった狸絆さんを真剣に見つめる。けど。
(な、なんだかもふーんっていう幻聴が聞こえるような……っ)
怖くない。むしろ、可愛い。
そしてもふもふが、もふもふが……っ!
「よかったら、撫でてみるかい?」
「え!? いいえそんな、恐れ多いことなど……!」
最初のコメントを投稿しよう!