猫又と化け狸

18/24
前へ
/239ページ
次へ
「元が元だから、本物の野生の狸と違って、感染症の心配もないからね。毛並みもこんなに美しいし、ほら、このしっぽなんて触ったらとても柔らかいと思わないかい?」  ふりふりと振られる、もっふりとふくらんだしっぽ。  気付けば狸絆さんはとてとてと私の横まで歩いてきて、ちょこんと背を向けておすわりをしてみせた。  私を見上げるようにして、顔だけで振り返り、 「それとも、私では撫でるに値しないかな……?」  まん丸なうるうるとした黒い目に見つめられてしまっては、もう、もう……! 「し、失礼させていただきます……っ!」 「うんうん、どうぞ」  嬉し気に伸ばされた背中に、私はごくりと喉を鳴らして手を伸ばす。  その時だった。スパン! と音を立て、襖が開かれる。 「仲良くしてくれんのはありがたいけどな、俺を差し置いて一気に距離を詰めすぎじゃないか?」 「! マオさん……っ!」 「待たせたな、茉優。どうだ? 色男だろ」  にっと口角を吊り上げてみせるマオは、その髪と同じ白色の着物に藤色の羽織を羽織っている。
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

151人が本棚に入れています
本棚に追加