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「元が元だから、本物の野生の狸と違って、感染症の心配もないからね。毛並みもこんなに美しいし、ほら、このしっぽなんて触ったらとても柔らかいと思わないかい?」
ふりふりと振られる、もっふりとふくらんだしっぽ。
気付けば狸絆さんはとてとてと私の横まで歩いてきて、ちょこんと背を向けておすわりをしてみせた。
私を見上げるようにして、顔だけで振り返り、
「それとも、私では撫でるに値しないかな……?」
まん丸なうるうるとした黒い目に見つめられてしまっては、もう、もう……!
「し、失礼させていただきます……っ!」
「うんうん、どうぞ」
嬉し気に伸ばされた背中に、私はごくりと喉を鳴らして手を伸ばす。
その時だった。スパン! と音を立て、襖が開かれる。
「仲良くしてくれんのはありがたいけどな、俺を差し置いて一気に距離を詰めすぎじゃないか?」
「! マオさん……っ!」
「待たせたな、茉優。どうだ? 色男だろ」
にっと口角を吊り上げてみせるマオは、その髪と同じ白色の着物に藤色の羽織を羽織っている。
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