猫又と化け狸

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 ドキリと心臓が強く跳ねたのは、確かによく似合っているというのもあるけれど、それよりも。  その姿が、夢の中で見た彼と同じだったから。 (本当に、あの夢で"繋がった"のは、マオだったんだ……)  マオはつかつかと私の隣まで歩を進めてくると、右肩をぐいと引いて私を引き寄せる。 「マ、マオさん!?」 (顔が、胸元が、近い……っ!!) 「良い毛並みを撫でたいってなら、あんなタヌキ親父じゃなくて俺にしてくれ」 「へ!?」 (だから、近いんですって……!)  間近で懇願するように眉を八の字にされると、きらきらオーラ―で圧倒されてしまう。  二十五年間生きて来て、面食いなつもりはなかったけれど……。いや、たぶん、マオがあまりに規格外なのだろう。  マオはあわあわと固まるだけの私ににこりと笑むと、今度は鋭い目つきで狸になった狸絆さんを睨む。 「俺が言う前にあやかしだって伝えちまうなんて。もっと距離を縮めてから告げようと思ってたのに、台無しじゃないか」 「おや、大事なことは先に伝えるべきじゃないかい? それも、夫婦として今後を共にすると誓った仲ならば余計に」
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