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「まったく、わかっていないねえ」
やれやれといった風にして、狸絆さんが首を振る。
「いいかい? 茉優さんはそもそも、私を撫でたがっていた。癒しのもふもふを所望していたってことだよ。マオの毛並みでは、もふとは程遠いからねえ。つまり、今この場で茉優さんの願いを叶えられるのは、この私しかいないってことになる」
えへんと胸を張った狸絆さんが、「ということで、そこを退いてくれ」と短い前脚をちょいちょいと振る。
と、マオは「な……っ!」と尻尾をピンとたて、明らかなショックを受けた顔で私を振り返り、
「そうなのか茉優!? 求めているのはモフなのか!? いやだが俺の毛並みも高級毛布さながらの艶やかさのはずで! そ、それに尻尾なら! もふみも少しはあるだろう!?」
(もふみ……)
「嘆かわしい。愛しい女性に我慢を強いるのかい? そのような鬼畜に育てた覚えはないのだがね」
「よくもまあいけしゃあしゃあと……! そのそも息子の好いた相手に撫でられようって方がおかしいだろ!」
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