152人が本棚に入れています
本棚に追加
「事情持ちの息子のためにも、好意を持っていただくためのスキンシップだよ。私ってば、なんて出来た父親なんだ」
「自分でいうな! それに、だとしても順序ってものが……!」
(ど、どうしよう)
余裕綽々の狸と、毛を逆立てた猫。
二人の言い合いを止めるにも、うまい言葉がまったく見当たらない。
(いっそ二人同時に撫でさせてもらうとか? ううん、それはマオが納得してなそうだし……)
あやかし同士の対立、というよりは、動物園のふれあい広場を彷彿させる二匹の攻防。
うっかり和んでいる場合じゃない。
大切な話をさせてもらうためにも、二人をとめなくては。
(でも、どうやって……)
瞬間、スパン! と勢い良く、私側の襖が開いた。
顔を跳ね向けると、立っていたのはなんとも姿勢の良い、タキさんで。
「いい加減、お茶をお出しして良いものかお伺いに参りましたら……。大旦那様、坊っちゃま、お二人ともそのようなお姿で、いったいどのような要件ですか」
ピタリと静止した二匹の空気が、一気に冷えていく。
最初のコメントを投稿しよう!