猫又と化け狸

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「事情持ちの息子のためにも、好意を持っていただくためのスキンシップだよ。私ってば、なんて出来た父親なんだ」 「自分でいうな! それに、だとしても順序ってものが……!」 (ど、どうしよう)  余裕綽々の狸と、毛を逆立てた猫。  二人の言い合いを止めるにも、うまい言葉がまったく見当たらない。 (いっそ二人同時に撫でさせてもらうとか? ううん、それはマオが納得してなそうだし……)  あやかし同士の対立、というよりは、動物園のふれあい広場を彷彿させる二匹の攻防。  うっかり和んでいる場合じゃない。  大切な話をさせてもらうためにも、二人をとめなくては。 (でも、どうやって……)  瞬間、スパン! と勢い良く、私側の襖が開いた。  顔を跳ね向けると、立っていたのはなんとも姿勢の良い、タキさんで。 「いい加減、お茶をお出しして良いものかお伺いに参りましたら……。大旦那様、坊っちゃま、お二人ともそのようなお姿で、いったいどのような要件ですか」  ピタリと静止した二匹の空気が、一気に冷えていく。
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