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契約をしたのは一年ほど前で、今回は内容の見直しをしたいとのことで、直接お会いして話し合いの場を持つ予定になっていた。
仕事の打ち合わせ後に合流したいからと、片原さんに指定されたのは表参道の路地に面したとあるカフェの前。
てっきりそこで話し合うものだと思っていたのだけれど、待ち合わせの時間に現れたのは、真っ赤な車に乗る片原さんだった。
「乗って!」
「……へ?」
「早く! ずっと止まってたら迷惑っしょ」
言葉に、周囲からの視線を自覚する。
(邪魔になる前にどかないと……!)
迷惑になったらいけない。
そんな一心で、私は開けられた助手席に乗り込んでしまったのだ。
「ん、いいこ」
(いいこ?)
妙に近しい物言いに疑念が掠めたけれど、片原さんは「シートベルトして」と満足そうに車を発進させて、
「ちょっと走るよ」
(そう言われてから、かれこれ十五分は経っていると思うのだけれど……)
なんだか怪しいから、絶対にあの人とは密室で二人きりにならないようにと何度も忠告してくれた、しっかり者な後輩の顔が浮かぶ。
(ど、どうしよう)
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