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「あ……はい、マオさんさえ、よければ」
(……どうしよう)
重ねられた掌が、嬉しくて、心強い。
「話してくれてありがとう、茉優さん。……家族の話ということで、私からもいいかな」
狸絆さんは居住まいを正し、
「さっき『つづみ商店』の店主だって言ったけれど、私たちは現世の品を幽世に、幽世の品を現世の必要としている者に売るという商人でね。マオにも、随分前から携わってもらっている。ゆくゆくは、私の跡を継いでほしいと考えているのだけれど……。茉優さんには、どうかうちに嫁入りをしていただきたくて」
嫁入り。構えていた言葉に、背筋が伸びる。
狸絆さんはそんな私の緊張を悟ったように、目尻を和らげ、
「私の我儘なのは重々承知しているのだけれどね。けれど私はこの家の主だから、他の者たちも気にかけてしまうんだ。茉優さんからしたら、見知らぬあやかしの世界ゆえ苦労をかけるだろう。それでも、どうか二人で。互いに支え合いながら、この家の者たちを守っていってくれたらなら、こんなに嬉しいことはないと願ってしまうんだ」
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