あやかしの血族向け家政婦業はじめます

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 静かに聞いていたマオが、「だから」と呆れたように口を開く。 「それはあくまで親父の願望だろ。何度も話したが、俺は茉優を、俺達の事情に縛り付けるつもりはない」  マオは私に、安心させるような笑みを向け、 「仕事は俺だけでも充分回せる。親父の立ち位置に俺がつくってだけで、他の仲間もいるワケだしな。だから茉優には無理してこちらの……あやかしの事情に付き合ってもう必要はないんだ。俺は茉優と一緒にいれれば、それでいい。婚姻を結んで夫婦になったとしても、茉優は茉優の選んだ生活をしてほしいと思っている。茉優には、幸せでいてほしい」 「マオさん……」  これは彼の気遣いなのだろう。伝わる心が温かい。  けれど本当に、いいのだろうか。狸絆さんは……この家は後継者となるマオを共に支える"嫁"を欲しているのに、その願いを全て蹴散らして。  自分だけが"幸せ"であろうと、マオに全て背負わせてしまうのは。 (って、なにを結婚前提で考えているの私……!)  これこそ雰囲気に流されたということだろう。  私は胸中で両頬を叩いて、やはり別の方を嫁として迎えるべきだと告げようとした、刹那。
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