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「さて、互いの腹の内も知れたことだし、ここで私から提案があるのだけれど」
にこりと笑んだ狸絆さんに言葉を飲み込むと、彼はゆるりと机に両肘を乗せ、
「なにごとも、知らねば選べもしないだろう? ということで、どうだろう。茉優さんには暫く生活を共にしてもらって、私たちのことをより知ってもらうというのは」
「……はい?」
(いま、生活を共にするとか聞こえたような?)
「親父、それはさすがに……!」
勢いよく立ち上がろうとしたマオが、膝頭を机にぶつけて「いっ!?」と悲鳴を上げる。
「マオさん、大丈夫ですか!?」
「あ、ああ……かっこわり……って、じゃなくてな、親父。うまい口車に乗せて茉優を囲おうだなんて、絶対にさせないからな!」
「おや、とんだ冤罪だなあ。私も現世生活が長いからね。予想が正しければ……茉優さん、例の不届き者と別れたあと、通信機器は確認したかい?」
「通信機器……いえ」
そういえば、片原さんに会うからと、スマホは消音モードにしてそのままだった。
「確認してみてはどうかな」
「っ、失礼します」
嫌な予感に、私は慌てて鞄からスマホを取り出す。と、
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