あやかしの血族向け家政婦業はじめます

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「……っ」  おびただしい連絡の数々に、思わず言葉を失う。  片原さんからの着信と、メッセージが数十着。それから上司からの着信と、届いているメッセージを震える指で開いた。  並んでいるのは叱咤の嵐と、片原さんからの"和解"条件。 「ま、茉優、どうした? 顔色が悪いぞ」 「あ……すみま、せ」 「謝罪に来いって、言われているでしょう? おそらくは、その不届き者の家に、一人でって」 「! どうして、それを……!」  狸絆さんの指摘通り、上司からのメッセージにはすぐに謝罪に行けと指示が来ていた。  絶対に一人で、あの人の家に。誠心誠意の謝罪をすれば、一方的にどなりつけて勝手に帰宅するという、無礼な態度は水に流すと。 (そんなこと、してないのに)  けれど片原さんが上司にそう告げたのなら、もはやそれが"真実"となっているのだろう。 (どうしよう、私から事情を説明したところで、聞いてもらえるとは思えないし……)  聞いてもらったところで、「ちょっと我慢すればいいだけでしょう」と。  結局は、あの人の家に行くことになるだろう。
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