あやかしの血族向け家政婦業はじめます

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「ウチに来てくれたなら、この家の全員で茉優さんを守ってあげられる。特にマオと居住区を共にしていれば、万が一あの男に見つかったとしても、いい牽制になるだろうしね。茉優さんがうまいことマオやウチを気に入ってくれれば、嫁入りの可能性が高まるわけだし、勢いで婚姻を結んで後から苦労するよりは、先に見切りをつけてもらったほうが、互いにとっても傷が少ないと思うんだ」  優しい微笑みに、ぐらりと気持ちが傾く。  あの人のところに一人で行くなんて、絶対にしたくはない。けれどこのまま突っぱねていては、良くて減給。最悪、自主退職を勧められるだろう。 「あの下種野郎、手加減なんてしてやるんじゃなかったな。茉優。今は嫁とかはいいから、身の安全を考えてウチに来ないか? 茉優が何かされたらなんて、考えるだけで今すぐアイツを縛り上げてやりたくなる」  低い声に思わず「だ、駄目ですよマオさん!」とその手を掴むと、マオは「わかってるさ。今動いちまったら、茉優が疑われちまうだろうしな」と爽やかに言う。  笑んでいるようで笑んでいない目元。 (あ、本気なんだ)  悟った私は、それだけ自分がいま危険な状況にあるのだと実感する。
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