あやかしの血族向け家政婦業はじめます

10/19
前へ
/239ページ
次へ
(この話を断っても、マオはきっと自主的に私を守ろうとしてくれるんだろうな)  まだ出会ってほんの数時間だというのに、なぜかそう確信してしまえる。  と、マオが「茉優」と悲し気な面持ちで私の手を握り返し、 「俺達はもう、茉優が傷ついたら、悲しいぞ」 「っ!」  じんわりと、心に想いが染み渡る。  この話に乗っても、断っても。どちらにしろ、迷惑をかけることに変わりないのなら――。 「ご迷惑を、おかけしてもよろしいでしょうか」  私は深々と頭を下げて、 「お手伝いできることは何でも命じてください。ご厄介になっている間の費用も、必ず、お支払いしますので――」 「金なんて必要ないぞ、茉優。もちろん、手伝いだってしなくていいんだ。茉優にここにいてほしいっていう、俺の、俺達の我儘なんだから」 「ですが、なにもせずただご厄介になるわけには」 「――つまり、"仕事"があればいいということだね?」  にっこりと。狸絆さんの今日一番の笑みに、私とマオはちらりと視線を合わせる。  次いでマオは盛大なため息と共に肩を落とすと、恨めし気な目を狸絆さんに向け、
/239ページ

最初のコメントを投稿しよう!

152人が本棚に入れています
本棚に追加