あやかしの血族向け家政婦業はじめます

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「これは親父にも、俺にも、この家の誰にも出来ない仕事だしな。それに、ほとんどヒトではあるとはいえ、依頼人はあやかしでもある。あやかしと関われば関わるほど、普通の……あやかしなどお伽噺だとする"普通の人間"としての生活と異なってしまうのは、避けられない」  よく考えたほうがいい、と。  気遣ってくれるマオにもう一度用紙を眺めてから、私は狸絆さんへと向き直った。 「精一杯頑張らせていただきますので、何卒、よろしくお願いします」 「……そうか、ありがとう」  朱角、と。狸絆さんが控えていた彼の名を呼ぶと、すべて承知しているかのように「かしこまりました」と朱角さん。  彼は私に感情の見えない黄金の目を向け、 「名刺をお持ちでしたら、頂戴してもよろしいでしょうか。それから、雇用関係などの仔細もお伺いさせていただきます。現在お住まいの場所からの引っ越しも、早急にこちらで対応いたしますので、なにか注意事項などございましたらお伝えください」 「え? それは……」 「この後のことは、私たちで進めておくよ。今は退職代行サービスなんてものもあるくらいだから、怪しまれることもないだろうしね」
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