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シートベルトはそのままに片原さんを振り返った刹那、
「茉優ちゃん」
ガシリと掴まれた右手。
寄せられた上体に、思わず身体をのけ反らせる。
「か、片原さん? 一体どうし――」
「俺の彼女とか、どう?」
「…………はい?」
(いま、彼女って聞こえたような?)
彼女? 彼女。
彼女というのはつまり……お付き合いをしている、恋人のこと。
(あ、わかった。彼女さんを私に紹介したいって話ね)
保険というのは、将来のもしものための大切な備え。
大事な彼女さんの"もしも"を考えて、つい熱くなってしまったのだろう。
(だから"保険の見直しをしたい"って、今日の呼び出しを)
あまりに早い相談にも、これで納得がいった。
それならそうと初めから相談してくれればと思わないでもないが、大切な人も私に担当してほしいと考えてもらえたのは、素直に嬉しい。
警戒を解いた私は納得の心地で微笑み、
「大切な彼女さまをご紹介いただけるなんて、とても嬉しいです。ご安心ください。私が責任を持って、ご希望に沿った最良のプランをご提示させていただきます」
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