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「大旦那様がお望みならば、あらゆる手段を尽くしましょう。必要とあれば、この身もあの者に差し出します」
「おい、ぜったい茉優に必要以上に近づくなよ!」
ダン! と勢いに机を叩いてしまったのは、仕方ないだろう。
冗談じゃない。いや、冗談ですら許せない。
茉優に言い寄る男なんて、例外なくその目を潰してやりたくなる。
通常のあやかしが相手ならば、この俺の放つ殺気で怯えたに違いない。
だが腹立たしいことに、長い時を共に過ごしてきた朱角は、とっくに慣れている。
朱角自身が、上位級のあやかしの血を持っているせいでもあるが。
「お前がつつがなくあの者を"嫁"にできれば、済む話だ。俺とて大旦那様のご命令でなければ、他者に媚びるなど死んでも御免だ」
「茉優さんにも"好み"があるだろうしねえ。前世の記憶がないのだから、必ずしもマオを選ぶとも限らないし」
「……万が一にも逃したくはないから、"家政婦派遣サービス"か?」
核心をついたのだろう。親父が笑みを深める。
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