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「こちらの浴衣、坊ちゃまから茉優様への贈り物にございますよ。といいましても、坊ちゃまの息抜きの副産物のようなものですから、あまり大事に捉えずにいてくださって結構かと存じます」
「そんな……」
戸惑う私に、タキさんは「さて」と鏡台の椅子を引き、
「えらく久しぶりにお嬢様を着飾れるとあって、このタキ、こうみえて浮かれているのですよ。茉優様がお嫌でなければ、私を助けると思ってタキの好きに着飾らせてくださいな」
そんな言われ方をしたら、強く断るなど出来ない。
結局、勧められるままに腰かけた鏡台で髪を整えられ、香りのいい化粧品で薄化粧を施され。見た目だけば立派な"お嬢様"が出来上がってしまった。
それはもう、夕食の準備が整ったからと部屋に呼びに来てくれたマオが、私を一目みるなり廊下にうずくまり、
「茉優……っ、そんなに艶やかな姿になって、いったい俺をどうしたいんだ……! よし、今夜は俺と二人きりの食事に変えてもらおうな。それで、俺に何をしてほしい? モノでも行動でも、茉優がねだってくれるのならなんだって叶えてみせるぞ?」
「あの、いえ、そうではなくてですね……っ!」
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