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先ほどまでの泣き顔はどこへやら。
物語の王子さながら、きりっとした顔でキラキラと顔を輝かせたマオに両手をとられ、戸惑っていると、
「茉優様がお綺麗なのは元よりのことでございます。それから、茉優様はタキめのお遊びにお付き合いくださっただけにございますので、なにも坊ちゃまにおねだりをするためではありません。茉優様の謙虚さは、坊ちゃまのほうがご存じでしょう」
「そりゃあな。けれど愛い相手のこんなに愛らしい姿を見せられたら、何かしてやりたくなるだろう? それに、他に見せたくはないと考えるのだって、当然の男心だと思うんだが」
「お気持ちは分かりますが、坊ちゃまの"我儘"にて茉優様の自由を制限なさるのは、反対にございます。今後とも茉優様を他者にいっさい会わせぬおつもりですか? それとも、茉優様が見目を整えるのを制限なさるおつもりで?」
「わーかった、わかった。このまま茉優を連れていく。ったく、タキは相変わらず手厳しいな……」
「坊ちゃまが道を誤らぬよう、戒めるのも私めの仕事のひとつでございます」
しずしずと低頭するタキさんが、「いってらっしゃいませ」と告げる。
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