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水の音がすると思ったら、池があるらしい。覗きこむと、立派な体躯の鯉が数匹、ゆったりと尾を揺らし泳いでいる。
黒い水面に映る月。満月になるまで、もう数日といったところだろうか。
「朱角のこと、すまないな。茉優が悪いってんじゃなくて、アイツは、人間を嫌っているんだ」
「……それは、私が聞いてしまっても平気はお話でしょうか。朱角さんにとって、その、あまり触れられたくない内容なのではないかと……」
「問題ない。隠しているわけでもないし、この屋敷の者は皆、心得ていることだ。……これから生活を共にするからな。茉優も、知っておいたほうがいいと思う」
アイツは半妖なんだ、と。
池の水面で、マオの姿がゆらめく。
「アイツの父親は牛鬼ってあやかしで、母親が人間だった。半妖といっても、人間に寄るもの、あやかしに近いものと、色々あってな。朱角はあやかしの血の方が濃かったんだが、そのせいで随分と人間から虐げられたんだ」
マオは優しい声で続ける。
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