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「マオさん、どうか私ではなく、朱角さんに気を配ってあげてください。突然、私のような無知な人間が生活圏に飛びこんできたんです。それでも"仕事"だからと耐えてくださっているのですから。お辛いはずです」
「っ、いくら茉優の頼みとはいえど、それは了承できない。茉優は優しすぎる。……前世の時から、そうだ」
泣きそうな、苦しそうな顔をして、マオが私の両手をぎゅうと握りしめる。
「これから言うのは、"余計なこと"だ」
赤い瞳が熱に染まる。
「誰かを救うためにと、茉優が傷を負わなくていいんだ。茉優が自身を制して、他者の幸せを願う必要などない。茉優、キミはもっと、自分を愛してくれ。そして愛されることを、受け入れてくれ。他の誰でもない。茉優は、幸せであるべきなのだから」
マオが包み込んだ私の手を、そっと自身の口元に近づけた。
私の手の甲に、掠めるようにして唇を落とす。
「俺はずっと、キミを幸せにしたかった」
「!」
赤く輝く強い眼差しが、逃さないと私の心を射る。
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