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「幸せであってくれ、茉優。そして願わくば、幸せに笑う姿を、一番近くで見せてくれ。もっと貪欲に、多くを望んでくれ。俺に……茉優を、守らせてくれ」
祈るような彼の言葉ひとつひとつが、胸の内で花火のように弾けて、溶けた綿あめのごとくとろりと沁み込んでくる。
苦しい。けれど、初めて知る……身体の芯が痺れるような、胸の閉塞感。
(錯覚してしまいそうになる)
彼に望まれているのは、自分なのではないかと。
本当に、マオは私を愛してくれるのではないかと。
ふと、マオが自嘲気味に口角を上げた。
「言わずにおこうと思っていたんだがなあ。重いだろう?」
「……いえ」
うれしいのに、かなしい。
相反する感情が、同時に成り立つとは思わなかった。
「ありがとうございます、マオさん」
拒絶もできず、受け止めることも出来ず。
ただ、感謝を告げることしかできなかった私に、マオは一度俯いてから、「やっぱり茉優は優しいな」と微笑んだ。
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