離れを借りて居住区にします

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 今は白いカーテンがひかれているけれど、周囲がガラス張りになっているので、ここでお茶をしたら優雅な時を過ごせそう。  二階には個人の部屋として洋室が二つに、衣裳部屋と物置。  トイレと簡単な洗面もついている。 「……離れというより、お庭にあるもう一つのお家ですね。それと……この部屋は、もしかして女性が使われていました?」  二階の個人部屋のひとつに置かれた、鏡台に箪笥とベッド。  どれも隣の部屋と比べ、女性的な印象を抱かせる。 「お、敏いな茉優。まあ、隠していたわけではないんだが」  マオは部屋に置かれた箪笥を撫で、 「ここは昔、親父の奥方がよく使ってたんだ。人間だったもんでな、来客があった際の避難場所にもなってたな」 「おく、がた様って……狸絆さん、人間の奥さんいらっしゃったんですか!?」 「ああ、三十年ほど前に亡くなったがな。それもあって、ウチの連中は人間に友好的なやつらが多い」 (だからタキさん、"えらく久しぶりにお嬢様を着飾れる"って……。狸絆さんの奥さんのことだったんだ) 「そんな大切な場所、とても使わせていただくわけには……っ」
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