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「んー、だが誰も使わないのなら、このまま朽ちていくだけだからなあ。俺達は皆、本邸で事足りてしまうだろ? わざと人をいれずにいたわけでもないんだ」
「……」
(確かに、"家は人が住まないとダメになる"なんていうけれど)
「俺が買い集めていた服もそうだが、使ってもらえるのならそれに越したことはないんだ。俺達だって、なにも聖人君主じゃないからな。嫌だと思うモノならば、はじめから触れさせない。だから茉優は、茉優の気持ちで選んでくれていいんだ」
はじめから、触れさせない。
その言葉にドキリとしてしまったのは、"ねね"について尋ねてもいいか、迷っているから。
生まれ変わり、猫から猫又になってまで探し続けた愛おしい人なのに。
私の記憶がないと知ってから、彼はほとんど彼女の話をしない。
『俺はずっと、キミを幸せにしたかった』
あの言葉を、眼差しを。
惜しみない愛を向けたかったのは、"ねね"だろうに。
(マオにとって、"ねね"のことははじめから触れさせたくない人なのかも)
「茉優? やはりここは荷が重いか?」
「え? あ、あと……そう、ですね。ですが……」
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