猫又様は花嫁を迎えたい

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 だがコイツは素質はあるくせに、人間の記憶があるせいか、どうにも昔から足りなかったのだ。  それが、おかげでやっと。 (愛だの恋だのは、どうでもいい)  彼を後継者として指名した大旦那様のためにも。あの人を頼むと遺していった、奥方様のためにも。  必ずあの人間をマオと結婚させ、完全なる"あやかし"にしてやろう。  それが大旦那様と亡き奥方様に仕える、俺の忠義。  これは、あの人間にしか出来ないことだ。  利用価値のあるうちは、あの人間は守るに値する。  俺はこみ上げる歓喜を胸中に押し込め、眼前の"あやかし"に祝福を込めて「畜生め」と返した。  眼前のあやかしは満足そうに笑んで、「今更だ」と愛しい人間の眠る部屋を見上げた。
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